ライカQを売った。
今年の2月に購入して以来、かたときも離さず持ち歩いていたが、いろいろ考えた末に売った。
17万円で。
ボディに何か所も傷があったり決して綺麗な状態ではなく、店員の方も「結構使い込んでますね〜」と苦笑いしていた。
買取上限額は23万円だったが、ライカQ2が発売されたのも影響しているのだろう。
そこまでいい値段にならなかったが、中古で37万円で購入した以上の価値はあった。
自分のために撮る
3月から半年間トロントに滞在したのも大きかった。
「もう二度と同じ瞬間は訪れない」という謎の強迫観念にとり憑かれ、行く先々でシャッターを切った。
当初は最低でも1年は滞在するつもりだったが、それができないとわかると、突然目の前の日常がいとおしく思えた。
それ以来、肌身離さずライカQを持ち歩き、目の前にあるものはなんでも撮った。
観光地でもないごく普通の場所や、フードコートで食べたご飯、借りていたシェアハウスの部屋や、よくわからない路地裏の風景まで。
周りから「こいつは一体なにを撮っているんだ?」という視線を幾度も感じた。
それこそ最初の頃は「SNSでいいねがつくような写真が撮りたい」と漠然と思っていたが、最後の方はもはや自分のために撮っていた。
「残りの人生、もうトロントに来ることもないかもしれない」と思うと撮らずにはいられなかったし、一種の寂しさの表れだと思う。
帰国する直前には初めてニューヨークにも行き、そこでも「次はないかもしれない」という思いに突き動かされて撮りまくった。
そして、日本に帰ってきたら嘘のように写真に対する情熱が冷めて売った。
1万7千枚の思い出
もともと日常生活のお供として、コンパクトで持ち運びしやすいカメラを探していた。
せっかく海外に行くんだし、どうせならライカQで撮りたいという気持ちから買った。
そういう意味では、十分役目を果たしてくれた(もちろん現金が欲しかったというのもある)。
いろいろ思い出がつまっていただけに、売るときに躊躇しなかったわけではないが、いまとなってはそうするのが当然だったように思う。
この半年間、狂ったように写真を撮り続け、1万7千枚の写真が残った。
自分でもどうかしていると思う。データの管理も大変だし。
一貫したテーマもなく作品と呼べるようなものでもないが、後悔はしていない。
大量の写真を見返すと、あのときの貴重な体験が蘇ってきて、なぜだか自然と前向きな気持ちになれる。
他人から認められなくても、自分のために写真を撮るのが一番じゃあないかなと思う。