セブ島初日

マニラ空港で夜を明かし、国内線でセブ島に到着したのは昼前だった。

入国審査はすでにマニラで済ませていたので、荷物を受け取って外に出る。

12月なのに蒸し暑い熱気が大気に充満していて、常夏の国に来たんだなあと実感した。

本格的な冬に突入する日本から来たわりには、不思議とテンションはあがらない。

クーラーもろくにきいていない、空港というにはお粗末な建物のせいだろう。

「タクシー?」と声をかけてくる客引きスタッフも、まったく信用できなかった。

事前にタクシーはぼったくられる可能性が高いと調べていたので、グラブという配車アプリを使うときめていた。

フィリピンではグラブが圧倒的に優勢でウーバーは数年前に撤退したらしい。

アプリで目的地を入力するだけで、近くにいるドライバーが迎えに来てくれ、支払いもオンラインで完結する。

現地通貨を所持していない旅行者や留学生には有り難いアプリだ。

ピックアップ場所もこちらで指定するのだが、場所がわからずすれ違いになってしまった。

しばらくうろううろしたあと、やっと指定されたナンバーの車を見つけた。

「15分ぐらい探し回ったよ」とドライバーの青年がスーツケースをトランクに詰めながら言った。

中古の日本車を改造したような車で古い感じはあったが、乗り合いバスのジプニーに比べればマシだろう。

車内で行き先を確認して目的地に向かって出発した。

慣れない移動の連続に疲れていたが、ドライバーの彼がいろいろときいてきた。

どうしてセブに来たのか、日本では何をしていたのか、卒業したあとはどうするのか。

ぼんやりした頭で答えながら、ところどころ噛み合っていなかったが、彼なりに気を遣って話しかけてくれているようだった。

「せっかくセブにいるんだしリラックスしろよ」と緊張をほぐそうとしてくれていた。

車窓からながめるセブの街は貧しかった。

土くさいストリートには、バラックのような店がならび、歩道にはゴミが散乱し、みすぼらしい服を着た人々が行き交う。

日本のような鉄道による交通網がないセブは車社会のようで、信号のない大通りを車を止めながら渡る歩行者は命がけ。

交通ルールもあってないようなもので、強引な割り込みは当たり前、狭い間を二人乗りのバイクが縫うように走っていく。

おそらくキラキラしたビーチなんかを想像して、セブ島留学に夢を抱いて来る人もいるだろう。

しかし、目の前の光景を見ていると嫌でも現実的な気持ちになり、うわついた気持ちも失せてしまう。

これから3か月は我慢の連続になるだろう。

ドライバーの彼も「日本はいいところなんだろ?」ときいてきたが、やっぱりあらためて恵まれた日本を再認識した。

そんな日だった。